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放映:2020年9月5日 BS-TBS
制作:BSN新潟放送 (2020年3月28日放送) / 45分

録画

新潟で放送される、と知った時に見たい見たい見せて!と願っていたこのドキュメンタリー、第57回ギャラクシー賞 テレビ部門 選奨を受賞したことで、BS-TBSのドキュメントJ枠で放送され、無事見ることができました。日本唯一の公共劇場専属舞踊団Noismの、芸術監督金森穣の、そして新潟市の、模索を追います。


出演
金森穣 / 篠山紀信(写真家) / 三浦雅士(評論家) / 中原八一(新潟市長) / 伊関佐和子(Noism 副芸術監督) / 鈴木忠志(演出家) ほか
収録(抜粋)
「Mirroring Memories - それは尊き光のごとく」(2019年7月)
「クロノスカイロス1」 (2019年12月)
劇的舞踊「カルメン」 (2019年5月, モスクワ)
15周年記念作品「Fratres I」
「夏の名残のバラ」 (2019年12月)
「世界の果てからこんにちは」構成・演出:鈴木忠志
「Still/speed/silence」音楽:原田敬子
「Fratres II」 (2019年12月)
ナレーション
森山未來
語り
表 佳世

感想

『新潟から世界へ』を体現する活動を繰り広げるNoimが、地元新潟では芸術文化への理解が足りずに税金の無駄遣いと指摘される……その狭間にあるものを追うドキュメンタリーでした。Noismと新潟市の問題ではあるのだけど、根幹にあるのは日本の、日本人の芸術に対する意識や価値観の話でもあり。コロナ禍の今、更に切実に訴えるものがあります。

Noismの活動、新潟市との交渉、そして金森さんご本人、という3つが柱になっていて。まずNoismの活動としてモスクワ(チェーホフ国際演劇祭)から利賀村、そして日々のクラスや厳しいリハーサルの映像などが見られたのは嬉しかったです。短い断片からでもビシビシ伝わってくる研ぎ澄まされたダンス。

新潟市とのやりとりの生々しいところはカメラは入っていないのですが、市議会でNoimに回す予算をほかへ、と発言する議員や、街の人の無関心などは拾われていて、その温度差にやるせない思いが。でも市長はちゃんと劇場に足を運んで公演を見ていたし、Noism側の地域貢献活動の強化など条件づきで22年8月までは活動継続へ。市議会で反対発言していた議員もその後劇場に何度か足を運んで、個人的には応援したいと考えるように。やっぱり足を運んで実際に見てもらうことこそが大事なのだと思うけれど、そこへ向かうまでのところ、なのでしょうか。

市のNoism歳出は年平均5000万(事業費全体の40数パーセント)程度で、劇場付きとはいえダンサーたちの平均年収は250万円で社会保険もないとのこと。厳しい財政の5000万の使い道に外からやいやい言うのは違うとは思うのですが……でもこの金額で目くじら立てられちゃうのは辛い。ダンサーたちが踊ることだけで生計を立てるのは厳しいのに。そして、日本中のダンスファンにとって、Noismがいる新潟市は本当に羨ましくて仕方のない場所なのに。

後半利賀村で鈴木忠志さんが「金森も少し努力が足りないのかもな」とおっしゃっていましたが、Noism側も新潟市が誇りに思えるようにと市民向けワークショップなど「新潟のNoism」をより打ち出し、日本スタイルの劇場文化の形を模索していきます。客席からは制服姿の学生たちが舞台を見つめ、視覚障害者向けのワークショップでは参加者がダンサーの身体に触って筋肉を確かめたり、手に手をとってゆっくり動き合うのがいつしかダンスに変貌したり。ワークショップのあと佐和子さんが「一流のダンサーのような肉体を、みなさんされていた」とおっしゃっていたのが印象に残ります。

また、穣さんの半生をなぞるパートでは、お父様の勢さんのお姿も。穣さんが子供の頃の父子ツーショットの写真もすごくよかったし、公演会場で話す勢さんも素敵でした。ルードラ時代の写真など、そのあたりも見られました。佐和子さんと阿賀野でお蕎麦食べたり共同浴場行ったりの休日まで見せていただいて あざっす!

……話はそれますが、以前某地方都市で美術館までタクシーに乗ったとき、運転手さんが「スタジアムとか絵画とかに(市が)大金使って、市民はヒーコラしてますよ」と言ってました。「外から見たら、どちらも羨ましいですけどねー」と返したのですが、集客によって恩恵を得るタクシーの運転手さんでもそういう視点なのかと驚いたことを思い出しました。市民感情というのはなかなか難しいのかもですが、Noismの活動が新潟のみなさんの誇りとなるよう外からも何かできるといいなと思います。