The Mother

マザー(アーサー・ピタ振付、演出) [DVD, 日本語解説付]

振付:アーサー・ピタ
出演:ナタリア・オシポワ、ジョナサン・ゴダード
収録:2019年6月20日 クイーン・エリザベス・ホール, ロンドン / 本編約79分 + 特典映像16分

画像リンク先:amazon.co.jp - 国内仕様DVD

2019年のナタリア・オシポワの公演「マザー」がDVD/Blu-rayになりました。先に発売された彼女のドキュメンタリー映画「ナタリア・オシポワ:フォース・オブ・ネイチャー」でも取り上げられていて興味を持ったので購入。


商品情報

特典映像:リハーサル(字幕:日・英・仏・独・韓)

海外|DVD(Opus Arte: OA1321D / Naxos Japan: NYDX50089)

FORMAT:NTSC / REGION:0

[国内仕様盤] Release: 2020/06/19

[海外盤] Release: 2020/06/18

海外|Blu-ray(Opus Arte: OABD7280D / Naxos Japan: NYDX-50090)

[国内仕様盤] Release: 2020/06/19

[海外盤] Release: 2020/06/18

クレジット

原作
ハンス・クリスチャン・アンデルセン「ある母親の物語」 ”The Story of a Mother” by Hans Christian Andersen
振付・演出
アーサー・ピタ Arthur Pita
作曲・演奏
フランク・ムーン Frank Moon
デイヴ・プライス Dave Price
美術
ヤン・シーブラ Yann Seabra
脚本
アンナ・ルレフスカヤ Anna Rulevskaya
照明
デイヴィッド・プレイター David Plater

出演

Mother:ナタリア・オシポワ Natalia Osipova
Death:ジョナサン・ゴダード Jonathan Goddard

感想

撮影はオシポワのドキュメンタリーと同じゲリー・フォックス。特典映像に収められているリハーサルシーンも、ドキュメンタリーに含まれていたものだと思います。

床ではなくセットの方が動く、寝室とキッチンとバスルームとが隣り合う回転舞台、といったらいいのかな。瀕死の赤ちゃんを寝ずに看病していた若き母親の元に医者がやってくるけど、それは実は死神で、母親が居眠りした隙に子供を連れ去ってしまう。アンデルセンの童話では、母親は死神を追いかけて、行き先を教えてもらうのと引き換えに子守唄を歌い血を流し眼を失い白髪になっていきます。この舞台では、それぞれの部屋のドアや鏡や水が異界への出入り口になっていて、様々に姿を変えた死神(それとも、別の人の設定なのだろうか)の要求に応えてズタボロになりながら子供を探し続けるのです。それはまるで、子供ではなく母親その人が死神に憑かれたかのよう。

原作の子守唄のかわりに、顔のないロシアのおばあちゃんバブーシュカに求められるのはロシアの民族舞踊で、ドキュメンタリーを見た時からこの場面が気にいっていました。作り手ピタと演じ手オシポワの、底知れぬダークさをちょっとユーモラスにしてしまう個性が癖になるのですよ。途中で原作には出てこない恋人が出てきて、エンディングが”epi-pro-logue”になっているので、見たあとしばらくの間、この作品のことを考え続けることとなりました。

オシポワが子供を求める様は動物的な本能のようでもあり、内なる欲求にしたがって様々な場所とスタイルで踊ってきた彼女の舞踊生活に重ねて見ることができるようにも感じました。彼女の強い身体性ゆえでしょうか。死神役のゴダードも相手に不足なしのダンサーで、オシポワとのクリエーションがいかに充実していたかが見てとれるタッグでした。意外にハイヒールのおみ足が綺麗で見とれてしまったわ。そして、フランク・ムーンとデイヴ・プライスの生演奏が効いていて、あまり大きくない劇場でどっぷり浸かりたい作品となっていました。

フィジカルな表現で成り立ったシアトリカルな作品で見応えもたっぷりあるのですが、時々唐突に踊り始めたりするところが作品のバランスとして気になる人はいるかも。また、ダンス作品として見始めると求めるのとは違うかもしれませんが、そんな不満を凌駕する強さがあるのではないでしょうか。私自身は、数あるアンデルセンの童話から「ある母親の物語」を選んだピタと、それに応えたオシポワの感性の共鳴を非常に面白く観ました。他のコラボレーションも見る機会があればいいのに。

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