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監督:Rebecca Tansley
出演:イリ・ブベニチェク、オットー・ブベニチェク、ロイヤル・ニュージーランド・バレエ
製作:2018年 ニュージーランド / 98分

画像リンクなし - 海外版DVD

以前RNZBの「ジゼル」DVDを取り寄せたショップから購入しました。ブベニチェクが映画「ピアノ・レッスン」を題材に振り付けた小品を、ニュージーランド・バレエの依頼で全幕ものに仕立て直した「ザ・ピアノ」についてのドキュメンタリーです。ほんとは作品そのものをDVDで見たかったのだけど、それはきっといつか叶うはず、、と信じて、まずはドキュメンタリーを。


商品情報

海外|DVD(Rialto:30456519) Release: 2019/07/17

FORMAT:NTSC / REGION:0

https://www.mynzballet.org.nz/3671/5506
https://www.mightyape.co.nz/product/the-heart-dances-dvd/30456519

クレジット

監督
Rebecca Tansley
出演
Jiří Bubeníček Choreographer - The Piano: the ballet
Otto Bubeníček Set and video design, music arrangement/composition and staging - The Piano: the ballet
Patricia Barker Artistic Director, RNZB
Moss Te Ururangi Patterson former Atamira Dance Company Artistic Director, (Ngāti Tūwharetoa) Māori Advisor - The Piano: the ballet
Frances Turner Executive Director, NNZB
Rhiannon Fairless Dancer
Mayu Tanigaito Dancer
William Fitzgerald Dancer
Luke Cooper Dancer
Caroline Wiley Dancer
Esther Lofley Wardrobe Manager
Andrew LeesTechnical Director
Andrew Tindal-Davis Technical Manager
Kathryn Osborne Stage Manager
Nicholas Schultz Ballet Master
Sara Garbowski Dancer
Nathan Mennis Dancer
Loughlan Prior Dancer
Paul Mathews Dancer
Alexandre Ferreira Dancer
Abigail Boyle Dancer
James Webster Māori artist and musician
Nadia Yanowsky Dancer
The Piano : the ballet

Choreography: Jiří Bubeníček
Set and Video Design: Otto Bubeníček
Costume Design: Elsa Pavanel
Music: Michael Nyman / Claude Debussy / Anton Arensky / Igor Stravinsky / Alfred Schnittke / Johannes Brahms / Dmitri Shostakovich
Music Arrangement and Composition: Otto Bubeníček
Staging: Jiří Bubeníček and Otto Bubeníček
Lighting Designer: Jeremy Fern
Maori Advisor: Moss Patterson

cast
Ada McGrath: Abigail Boyle / Nadia Yanowsky / Sara Garbowski
George Baines: Alexandre Ferreira / Massimo Margaria / William Fitzgerald
Alistair Stewert: Paul Mathews / Loughlan Prior / Nathan Mennis
Flora: Hazel Couper / Bianca Lungu / Gemma Lew
Reverend Campbell: Shaun James Kelly / Felipe Domingos
Nessie: Mayu Tanigaito / Georgia Powley
Aunt Morag: Kirby Selchow / Leonora Voigtlander / Marie Varlet

感想

2017年にNHK プレミアムシアターで放映してくれたイリとオットーのブベニチェク兄弟のドキュメンタリーで、この作品の前身である2015年制作の1幕もの「The Piano」製作の様子が少し流れました。興味津々で調べたところ、2018年ロイヤル・ニュージーランド・バレエで全2幕の作品として仕立て直す予定があると知り、ときどきその様子を伺っていました。

今年になってRNZBのサイトを見たらドキュメンタリーDVDが発売になっているということだったので、喜び勇んでお取り寄せ。ショップのアラートで「これはリージョン4だからね!」と出てきたけど、届いたものはリージョンALLでした。そして英語字幕も用意されています。下に貼ったトレイラーをぜひご覧になっていただきたい…詩的で美しいですよねー。映画「ピアノレッスン」の世界が、しっかり描かれていると思いませんか。

映画としても、とても出来の良いドキュメンタリーでした。100分、見応えみっしり。違う文化を持つ人たちの出会いと相互理解という永遠のテーマが(映画同様)このバレエの底にはあるのですが、チェコのブベニチェク兄弟と彼らを迎える側にもそれが横たわり…というもの。イリとオットー(と、映画では全く触れられていなかったけど、助手としてArsen Mehrabyanも一緒でした)がニュージーランド・バレエに来た初日からカメラが入っていて、撮影に入る前に予想していたものよりずっと面白いものが撮れたのではないかと思ってしまいました。

イリとダンサーたちのダンススタイルの違い。でも、これはじきにフィットするし、新しい体験がダンサーたちに与えるものの大きさ、ダンサーの喜びはカメラを通して伝わってきます。イリとカンパニーの美術・テクニカルスタッフの仕事の進め方の違い、まあこれも多かれ少なかれ何処でも起こりうることでしょう。でも最初の方のテクニカルミーティングに、イリもオットーも参加していないことには違和感を感じました。

そして、ヨーロッパ人のイリとマオリ系のアドバイザーの価値観のすり合わせ。これが最大の課題になっていた気がします。イリはマオリの象徴として一番有名なハカをドルトムントで発表した最初の「ザ・ピアノ」の中に組み込んでいたのですが、ニュージーランドで実際の振りつけ作業が始まってから「この曲と踊りはそぐわない」という話になり…と。ハカにはそれぞれ意味があって使われる場所も決まっているし、それぞれの部族に属するものなので使用するには許可がいる、そして改変は一切許されない、非マオリが舞うことも好ましくない、というようなことですね。この点特にニュージーランドで上演するには厳密にしないと観客にもそっぽを向かれてしまう、というのをイリに理解してもらうまでが大変そうでした。イリも最後の方で、マオリの文化を尊重することの重要性を早いうちに理解すべきだった、もしそうしていたら違った結果になっていたと思う、と言っていました。

おそらくバレエ団の芸術スタッフもその認識が甘い人がいたかもしれません(「マダム・バタフライ」には日本人が出てくるけど、必ずしも日本人が演じるわけじゃないよね、役柄だからそこは考えないでしょ、的な)。マオリ・アドバイザーのMossとイリは話し合いを重ねて理解しあうことはできたのだけど、結局はカンパニーの対応が誠実ではなかったみたいで、途中でMossさんは降りてしまったっぽいんですよね(でも出来上がった作品にはアドバイザーとして名前が残っているので、もしかしたら最後までやったのかもしれない、その辺はよくわかりません)。

あまり深くは追われてなかったけど、通常「スコアが完璧に揃って6週間」で準備する新作を「音楽に大きな穴があって4週間」という期間の短さと、見た所それぞれに起因する少しずつのコミュニケーション不足が、「全員がハッピー」というわけにはいかなかった理由なのかな、と感じました。上で書いた「違和感」ですが、その後も全員揃ってのミーティングはスクリーンには出てこなかったし。

そういった食い違いがあるものの、作品制作の過程は本当に面白かったです。イリがダンサーたちを作品に導く方法はとてもわかりやすくて、ダンサーたちがみるみる自分のものにしていくのが見てとれます。そんなに大きなカンパニーではないのに、初演から3キャストつくるのもよいですよね(これは、芸術監督のパトリシア・バーカーの意向が強いみたいだけど)。

子役ダンサーのオーディション、キャスティングの苦労、衣装や装置…。主役のAdaの衣装フィッティングでダンサーが試しに踊ってみると、それを見た衣装さんたちがニコニコ嬉しそうにしていたのも印象的でした。自分が作ったものに命が宿る瞬間ですものね。

ダンサーたちの体に振付が入りパ・ド・ドゥの練習をしていくところなどは、そのうち本番の同場面に切り替わるので、美しい舞台映像も抜粋で堪能できるようになっています。ただ、なぜか稽古中のpddはボーカル曲がBGMに使われていて、ちょっと安っぽく感じてしまうのが残念ですけれど…出来上がった舞台は本当に美しい作品で、特にBainesとAdaのpddは素晴らしくセンシュアルで感銘を受けました。谷垣内まゆさんがイリの振付言語を素晴らしく踊っていたのも印象に残ります。Ada役の一人はナディア・ヤノウスキーでした。オランダから移籍したのですね。

オットーの美術はニュージーランドの自然を大きな可動式の壁にプロジェクションするのを含めて評判がよかった模様。こんなに美しい舞台映像の断片を見てしまったら、全編撮ってるでしょ?DVDお願いします!という気持ち。はー、見たい、全部見たい。

RNZBのサイトに、初演の際のEducation ResourceのPDFがありました。
https://rnzb.org.nz/wp-content/uploads/2018/02/Piano-Resource-007_online.pdf
ここにはアルセンがドルトムントの1幕物に「The Piano」をやるべきだと勧め、ドルトムント公演でBainesを踊り、そしてニュージーランドにアシスタントで来ている、とイリが書いていました。また、Mossのメッセージを読むと彼の役割と心中も伝わります。

Official Trailer