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出演:茶谷正純 ほか
制作:Cineric Creative, NHK / 50分

録画

NHK BS1でアルヴィン・エイリー・アメリカン・ダンス・シアターで長く副芸術監督をつとめ先ごろ引退された茶谷正純さんのドキュメンタリーが放映されました。Cineric CreativeとNHKの国際共同制作。茶谷さん、こんなにチャーミングな方だったのですね。素晴らしいドキュメンタリーでした。


クレジット

出演
茶谷正純 Masazumi Chaya, アルヴィン・エイリー・アメリカン・ダンス・シアター副芸術監督
ロバート・バトル Robert Battle, 芸術監督
ジュディス・ジャミソン Judith Jamison, 芸術監督 1989-2011
マシュー・ラシング Matthew Rushing, リハーサル監督, 次期副芸術監督
アルヴィン・エイリー Alvin Ailey *archives
マーカス・ウィリス Marcus Jarrell Willis, ダンサー
瀬河寛司 Kanji Segawa, ダンサー
シェルバー・モンテロ Chalvar Monteiro, ダンサー
リンダ・シレス・シムズ Linda Celeste Sims, ダンサー
マーク・マニガルト Mark Manigault, 茶谷の夫
ロニー・ファイバーズ Ronni Favors, 新リハーサル監督,元ダンサー
ウェンディー・ペロン Wendy Perron, ダンス・マガジン・アワード司会者
ナレーション
黒柳徹子

抜粋映像

  • 「ブルーズ・スイート」より「フリスコ」”Frisco” from Blues Suite
  • 「リベレーションズ」より「シナーマン」 ”Sinner Man” from Revelations
  • 「ラブソングス」 Love Songs
  • 「クライ」 Cry
  • 「リベレーションズ」より「ロック・マイ・ソウル」 ”Rocka My Soul” from Revelations

感想

茶谷さんのことは確か、バレエを好きになった2000年代以降になってから、古いダンスマガジンのインタビューで知った、のだと思います。アルヴィン・エイリー舞踊団(以下AAADC)の副芸術監督は日本人なんだ!と。それ以降はあまりその言葉や人となりを雑誌などから知る機会もないままに来てしまいました。

2019年12月のAAADCシティ・センター・シーズンをもって副芸術監督から引退した茶谷さんを、5年前の2015年から折々に追い続けたドキュメンタリーが今回の番組です。ナレーションの黒柳徹子さんとはNHKの「ステージ101」という番組で共演。茶谷さんはその後NYで故・岡紀彦さんと共にAAADC入団、黒柳さんも1971年NYに留学されたということで、長いお付き合いの親友なのだそうです。当時の貴重なお写真が見られました。

一頃のAAADCには、茶谷さんと岡さん、そして後にオハッド・ナハリンと結婚する梶原まりさんと3人の日本人ダンサーがいたのですよね。その時代の舞台、見てみたかったな。このドキュメンタリーの中でも、アーカイブ映像の中で踊る茶谷さんや岡さんの姿は見られるのですが、古い映像でもわかるエネルギーが凄くて、自然と目が引き寄せられてしまいました。オーディションの際のエピソードとしてジュディス・ジャミソン(前芸術監督、名誉芸術監督)が、確かにカンパニーのほとんどが黒人ダンサーだけど、「ピンク・緑・黄色・水玉模様だって構わない、踊る才能があれば歓迎だ」といってエイリーは茶谷さんを受け入れた、と話していて、それも頷けるのでした。

茶谷さんの副芸術監督としての仕事は多岐にわたり、後任は一人ではなく3人(ラシング、ファイバースと、クリフトン・ブラウン)が分担してあたるという事だけでも彼のスーパーマンぶりが伝わります。多忙だけれど確かで何よりハートのある仕事ぶりは、このドキュメンタリーのささやかな時間の中でもよくわかりますし、芸術監督のロバート・バトルが彼の引退をなかなか認めたがらなかったのも理解できるというものです。

リハーサルなど事あるごとにダンサーたちに「アルヴィンはこう言ってた」と彼の言葉を伝えていて、その一つ一つが宝石のよう。全てメモせずにはいられませんでした。例えば、「この振付はまっすぐ倒れるのかな、横向きに?」とダンサーに聞かれた時、茶谷さんの答えは「アルヴィンは『原始的に』と言ってた、綺麗にではなく」なんですよね。ダンサーやスタッフは異口同音に「チャヤはエイリーをダイレクトに伝えてくれる人」と話していましたし、きっとその一言一言が彼らの胸に刻まれているのでは。

あとね、茶谷さんはダンサーの褒め方がすごく素敵なのです。その辺りも彼がカンパニーから愛される理由の1つなのかな。2019年の夏、おそらくシーズン最初の全員集合の時かなあ、ダンサーたちに引退を発表したときの様子もそうですし、最後のシティセンターでの舞台稽古でダンサーたちが舞台で踊りながら「チャヤ!」って叫ぶのを聞いて「愛してる!」って返す茶谷さんとか、なんて素敵なんだとウルウルしてました。

素敵といえば夫のマークさんもとてもチャーミングで愛情深い方。お二人の会話はどれもしみじみ素敵だったのですが、茶谷さん引退記念公演後のパーティのスピーチでマークさんが「心配しないでください、僕が大事にします!」って言ったの最高でした。それと、マークさんの言葉で残しておきたいのは、ジュディス・ジャミソンが芸術監督引退を決めた時、茶谷さんに「芸術監督をやったら?」と言ったのだけど、断固拒否された、黒人でなければならないんだ、と。いうこと。茶谷さんの立ち位置について、ドキュメンタリーの冒頭でマシュー・ラシングが話していたことにつながりますね。

だいぶ長くなってしまいましたが、あと少しだけ。現在カンパニー唯一の日本人ダンサーである瀬河さんのコメントや踊る様子も、もちろん収められています。エイリーがなくなった時のお葬式の模様や、2016年の取材時には茶谷さんがエイリーのお墓参りにいくところも。また2019年、茶谷さんはダンスマガジンアワードを受賞されたので、ウェンディ・ペロンが彼に話しにきた様子などもありました。授賞式でトロフィーを掲げる茶谷さんもまたチャーミング!

2019年12月22日の記念公演での、「Chaya, tonight is yours.」というジャミソンのスピーチ、「ロッカ・マイ・ソウル」で立ち上がって手拍子&踊り出す客席の様子、そして舞台上一人で総立ちのオベーションを受ける茶谷さん。過去のダンサーたちもみなステージ上で茶谷さんのキャリアを祝福する様子などなど、、48年のカンパニー在籍をこのように締めくくることができるのは、本当に愛されていたからこそですよね。なお、茶谷さんは引退後もカンパニーから離れることなく、他のカンパニーでもエイリー作品を上演できるように整えていくようなお仕事をされるようです。

「舞踊団のマグカップ、割らないでね。もう(在庫が?)ないから」と茶谷さんが言っていたマグカップもそうなのですが、茶谷さんがダンサーたちが着ていた歴代のカンパニーTシャツがどれも素敵だったのも印象的でした。久しぶりにアルヴィン・エイリーの映像、見直してみようと思います。本当に素晴らしいドキュメンタリーでした。今の所まだ再放送はないみたいなのですが、再放送の折にはぜひご覧になってみてくださいね。

# そういえば、ヴの字を表記しないことになったから?アルビン・エイリーと番組中で表されるのが、違和感ありまくりでした。ううむ。