La Bella Addormentata new Bosco / Teatro alla Scala, Milan
改訂振付:ルドルフ・ヌレエフ
出演:ポリーナ・セミオノワ、ティモフェイ・アンドリヤシェンコ ほか
収録:2019年6月26, 29日 ミラノ・スカラ座 / 161分
画像リンク先:amazon.co.jp - 海外版DVD
今年6月のミラノ・スカラ座バレエ「眠れる森の美女」がNHKプレミアムシアターで放映されました。豪華なヌレエフ版はスカラ座衣装部の手にかかるとさらに絢爛豪華…な印象になりますね。主演はゲストのセミオノワとスカラ座プリンシパルのティモフェイ・アンドリヤシェンコ。
(2020.12.13追記)2020年11月に、新書館から国内Blu-rayが、CMajorから海外版DVD/Blu-rayが発売になっています。
商品情報
- 国内|Blu-ray(新書館:DB20-1102) Release: 2020/11
- 海外|DVD(C Major Entertainment:756008) Release: 2020/11/20
FORMAT:NTSC / REGION:0
- 海外|Blu-ray(C Major Entertainment:756104) Release: 2020/11/20
クレジット
- 原作
- シャルル・ペロー Charles Perrault
- 台本
- マリウス・プティパ Marius Petipa
イワン・フセヴォロシスキー Ivan Vsevolozhksy - 原振付
- マリウス・プティパ Marius Petipa
- 改訂振付
- ルドルフ・ヌレエフ Rudolf Nureyev
- 音楽
- ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー Pyotr Ilyich Tchaikovsky
- 振付監修
- フローレンス・クラーク Florence Clerc
- 装置・衣装
- フランカ・スクァルチャピーノ Franca Squarciapino
- 照明
- マルコ・フィリベック Marco Filibeck
- 指揮
- フェリックス・コロボフ Felix Korobov
- 演奏
- ミラノ・スカラ座管弦楽団 Orchestra del Teatro Alla Scala
キャスト
オーロラ姫:ポリーナ・セミオノワ Polina Semionova
デジレ王子:ティモフェイ・アンドリヤシェンコ Timofej Andrijashenko
King Florestan XXIV:アレッサンドロ・グリロ Alessandro Grillo
The Queen:マルタ・ロマーニャ Marta Romagna
Catalabutte, the master of cerimonies:リッカルド・マッシミ Riccardo Massimi
リラの精:エマヌエラ・モンタナーリ Emanuela Montanari
カラボス(悪の精):ベアトリーチェ・カルボーネ Beatrice Carbone
Seven Fairies:Martina Arduino / Alessandra Vassallo / Gaia Andreanò / Caterina Bianchi / Agnese Di Clemente / Maria Celeste Losa / Nicoletta Manni
Their Knights:Gabriele Corrado / Christian Fagetti / Andrea Risso / Andrea Crescenzi / Mattia Semperboni / Emanuele Cazzato / Walter Madau
Four Princes:Marco Agostino / Gioacchino Starace / Edoardo Caporaletti / Nicola Del Freo
Princess's friends:Vittoria Valerio / Alessandra Vassallo / Gaia Andreanò / Christelle Cennerelli / Marta Gerani / Caterina Bianchi / Alessia Auriemma / Agnese Di Clemente
The Countess:Deborah Gismondi
The Duke:Giuseppe Conte
Pas de cinq:ヴィルナ・トッピ Virna Toppi / ニコラ・デル・フレオ Nicola Del Freo
アレッサンドラ・ヴァッサロ Alessandra Vassallo / ガイア・アンドレアノ Gaia Andreanò / カテリーナ・ビアンキ Caterina Bianchi
Puss in boots:フェデリコ・フレジ Federico Fresi
The white cat:アントネッラ・アルバーノ Antonella Albano
Blubird:クラウディオ・コヴィエッロ Claudio Coviello
Princess Florine:ヴィットリア・ヴァレリオ Vittoria Valerio
感想
ミラノ・スカラ座バレエによるヌレエフ版「眠り」。カメラ割りにデリカシーのなさを感じることがあるのが難点ですが、プリンシパルがわっさわさ出てきて見応えありました。ヌレエフが改訂すると男性ダンサーの踊りの量が増え難易度も上がるわけですが、この「眠れる森の美女」については物語の厚みも増して、壮大な絵巻ものを見ているようでワクワクします。加えて豪華な衣装(スカラ座版の美術はフランカ・スクァルチャピーノ)ですから、まさに豪華絢爛。
私の「眠り」基準はセルゲイエフ版なのですが、ヌレエフ版は豪華な衣装と振付のハードさ、リラの精とカラボスが両方踊らない役である事と共に、セルゲイエフ版以上に細部のドラマにリアリティを持たせているのが特徴ではないかと。例えば1幕の糸紡ぎの針のエピソード、オーロラ姫の16歳の誕生日祝いのために招いた花嫁候補たち客人をつれた国王夫妻が入城する時を狙って、カラボスが村人たち糸紡ぎの針を与えるのですよね。16年間ずっと禁止されていたわけだから、編み方を知っているのは年配の人だけで、若い人たちは「それ何?」と盛り上がる。カタラビュットも人情派で、違反のかどで村人たちが死刑宣告されたらおいおい泣いてしまうし、王妃の懇願も、王のメンツや客人たちの手前も考慮してうまく取りなすしで、この場面の見応えは、プティパ準拠としては最高では、と思ってしまいます。
そうだ、今回すごく驚いたのが、そのカラボスから針を渡された年配の村人3人が、100年後の王宮門前でカラボス一味に加わっていたこと。えっ?そういうことだったの?と驚いてパリオペ映像を見直したのですが、もしかしたら、その村人たちも黒いフードをかぶって一緒にいたかも。スカラ座のは、村人の格好のままだったので気づいたけれど…驚きました。
また王子がリラの精に導かれるのも王宮の入り口までで(カラボスはリラの精が近づいただけで倒れてしまう)、そこから先は王子が自力で進んでいく展開も好き。キスで目覚めたオーロラ姫は王子を探して自分で「発見」するし、フロリムンド王子は王から結婚の許可をもらって王妃へご挨拶もしてから、オーロラ姫に跪く(この時の王子の晴れやかな様子がとてもよかった!)。短い時間だけど、ちゃんと二人の愛が描かれていると思うのですよね。
オーロラ姫はゲストのセミオノワ。キラキラのオーロラ姫でしたが、どこか精彩を欠いていたようにも見えました。ローズアダージオなどしっかり踊りあげてはいるのですが…見ているこちらの感覚的な問題かもしれませんが、ちょっと残念でした。気の毒だったのは、スカラ座のオーロラ姫の衣装が彼女には似合っていなかったこと。1幕から3幕まで色とディテールは違えど同じような形のチュチュだったのですが、胸元のカットやアームホールの切り替えとシフォンの袖も、彼女が綺麗に見える形ではないと思いました。アームホールはすっきり見えなかったし、あのシフォンの袖だと腕のラインも綺麗に見えないですよねー。スカラ座のダンサーにはちゃんと合っているのだろうか。スクァルチャピーノの衣装は豪華でとても素敵ですが、オーロラ姫の衣装に関してはパリ・オペラ座の方が圧倒的に好きでした。
王子はアンドリヤシェンコ。長身のダンサーですが、それでもセミオノワは彼には大柄すぎたのかも。サポートがもたつくところがあり、2幕はオーロラ姫の幻影感が薄れてしまったし、3幕のフィナーレの頃にはかなりバテていたように見受けられました。それでも、2幕登場時の我が世の春的に自信満々なところはヌレエフを彷彿させるし、一人になるとメランコリーの塊になるところも、とてもよい。”間奏曲”の王子ヴァリエーションも上手くまとまってました。踊り終わると白いシャツが汗で素肌に張り付くほどハードなヴァリエーション、この後にオーロラ姫のサポートは大変なのはよくわかる…。うーん、誰が悪いわけでもないけれど、セミオノワとアンドリヤシェンコの組み合わせは相性が良いとは感じなかったです。
それでも、演技達者が多くて、楽しい舞台だったのは間違いないところ。カラボスもリラも適役だったし、王も王妃もカタラビュットもよかったです。感心したのは、2幕幻影の場の最初、舞台後方に妖精たちに囲まれて浮かび上がるオーロラ姫の姿。まるで宗教画のような荘厳さがあり、さすがイタリア!と思いましたです。このシーンもパリオペとは違うので、フローレンス・クラークが監修した部分なのかもしれませんね。
個人的なツボは3幕のディヴェルティスマンで、それまで舞台後ろの玉座に座っていた国王夫妻が、白い猫と長靴を履いた猫のpddになったらイソイソと玉座を降りて、近くで踊りを見て喜んでらしたこと。猫好きなのかな、ふふ。今までパリオペの映像では気にしたことのなかった場面だったので、そちらも確認したら、やはり玉座を降りて興味津々で楽しんでおられました。見比べると、猫やからボスのメイクなどもけっこう違って面白いです。
この記事の更新履歴
- 2021.11.17 - amazon.com/amazon.co.uk 商品リンク削除
- 2020.12.13 - 商品情報追加
- 2020.04.19 - 感想書きました。