Ballet a la Russe - Young dancers: the pains and gains of Russian ballet

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監督:オリガ・パストゥホワ
制作:2017年 / 138 + 135分

録画

WOWOWで2019年5月にエピソード1-5、7月にエピソード6-10が放映されたロシア・バレエのドキュメンタリー。エピソード1と3がマリインスキー/ワガノワ・バレエ・アカデミー、エピソード2-6がロシア国立バレエ団、7-10が2016年のバレエコンクール”アラベスク”の出場者たち、となっています。


クレジット

監督
オリガ・パストゥホワ Olga Pastukhova

エピソード

Episode 1

ニコライ・ツィスカリーゼ Nikolay Tsiskaridze, ワガノワ・バレエ・アカデミー校長
レナータ・シャキロワ Renata Shakirova, マリインスキー・バレエ
キミン・キム Kimin Kim, マリインスキー・バレエ
ソフィア・ヴァリウリーナ Sofia Valiulina, ワガノワ・バレエ・アカデミー生徒
グルナズ・ヴァリウリーナ Gulnaz Valiulina, ソフィアの母


Episode 2

ヴァチェスラフ・ゴルデーエフ Vyacheslav Gordeev, ロシア国立バレエ団芸術監督
アンナ・シェルバコワ Anna Scherbakova, ロシア国立バレエ団プリンシパル
ウラジミール・ミネフ Vladimir Mineev, ロシア国立バレエ団プリンシパル
アルチアン・アラケリャン Arutyun Arakelyan, ロシア国立バレエ団
オルガ・コファンチュク Olga Kokhanchuk, ロシア国立バレエ団主任講師
ヤナ・カザンセワ Yana Kazantseva, ロシア国立バレエ団講師


Episode 3

イリーナ・シトニコワ Irina Sitnikova, ワガノワ・バレエ・アカデミー クラシック部門主任講師
ソフィア・ヴァリウリーナ Sofia Valiulina, ワガノワ・バレエ・アカデミー生徒
アーニャ・シャロワ Anya Sharova, ワガノワ・バレエ・アカデミー生徒
リュドミラ・コモロワ Lyudmila Komolova, ワガノワ・バレエ・アカデミー 講師
グルナズ・ヴァリウリーナ Gulnaz Valiulina, ソフィアの母
アルチアン・アラケリャン Arutyun Arakelyan, ロシア国立バレエ団
アレクサンドル・スルディン Aleksandr Suldin, ロシア国立バレエ団
ヴァレリア・ジュラヴリョーワ Valeria Zhuravleva, ロシア国立バレエ団プリンシパル


Episode 4

ヴァチェスラフ・ゴルデーエフ Vyacheslav Gordeev, ロシア国立バレエ団芸術監督
アンナ・シェルバコワ Anna Scherbakova, ロシア国立バレエ団プリンシパル
ドミトリー・コテルミン Dmitry Kotermin, ロシア国立バレエ団プリンシパル
ウラジミール・ミネフ Vladimir Mineev, ロシア国立バレエ団プリンシパル
ゲオルギー・ソローキン Gregory Sorokin, ロシア国立バレエ団
イブラヒム・カビロー Ibrahim Kabilov, ロシア国立バレエ団技術監督
オルガ・コファンチュク Olga Kokhanchuk, ロシア国立バレエ団主任講師


Episode 5

ヴァチェスラフ・ゴルデーエフ Vyacheslav Gordeev, ロシア国立バレエ団芸術監督
アンナ・シェルバコワ Anna Scherbakova, ロシア国立バレエ団プリンシパル
ドミトリー・コテルミン Dmitry Kotermin, ロシア国立バレエ団プリンシパル
ウラジミール・ミネフ Vladimir Mineev, ロシア国立バレエ団プリンシパル
オルガ・コファンチュク Olga Kokhanchuk, ロシア国立バレエ団主任講師
エカテリーナ・エルマコワ Ekaterina Ermakova, ロシア国立バレエ団


Episode 6

ヴィタリー・アフンドフ Vitaliy Akhundov, ロシア国立バレエ団講師
ヴァチェスラフ・ゴルデーエフ Vyacheslav Gordeev, ロシア国立バレエ団芸術監督
アンナ・シェルバコワ Anna Scherbakova, ロシア国立バレエ団プリンシパル
ドミトリー・コテルミン Dmitry Kotermin, ロシア国立バレエ団プリンシパル
ウラジミール・ミネフ Vladimir Mineev, ロシア国立バレエ団プリンシパル


Episode 7

アンナ・マルコワ Anna Markova, N.I.サッツ子供音楽劇場ソリスト
イヴァン・ティトフ Ivan Titov, N.I.サッツ子供音楽劇場ソリスト
千野円句 Marc Chino
西島勇人 Hayato Nishijima, 国立バレエ・モスクワ ソリスト
アンナ・アケルキナ Anna Akelkina, シアター・スタジオ・オブ・モダン・コレオグラフィー所属
グリゴーリ・セルゲイエフ Grigory Sergeev, シアター・スタジオ・オブ・モダン・コレオグラフィー所属
マリア・アケルキナ Maria Akelkina, バレエ講師、ロシア人民芸術家
エレナ・ザヴェルシンスカヤ 国際バレエコンクール”アラベスク”ディレクター
ウラジーミル・ワシーリエフ Vladimir Vasiliev, 国際バレエコンクール”アラベスク”審査委員長
千野真沙美 Masami Chino, 円句の母
コンスタンティン・マトヴェイエフ Konstantin Matveev, 国立バレエ・モスクワ講師


Episode 8

アンナ・マルコワ Anna Markova, N.I.サッツ子供音楽劇場ソリスト
イヴァン・ティトフ Ivan Titov, N.I.サッツ子供音楽劇場ソリスト
ナタリア・ヴラチェヴァ N.I.サッツ子供音楽劇場監督補佐
バベル・アフォニン 外傷整形外科 部長
ウラジーミル・キリロフ Vladimir Kirillov, N.I.サッツ子供音楽劇場芸術監督
イリーナ・マカロワ N.I.サッツ子供音楽劇場講師


Episode 9

コンスタンティン・マトヴェイエフ Konstantin Matveev, 国立バレエ・モスクワ講師
西島勇人 Hayato Nishijima, 国立バレエ・モスクワ ソリスト
クリスティーナ・リュムシナ Kristina Ryumshina, 国立バレエ・モスクワ ソリスト
アルチョム・イグナチェフ Artyom Ignatiev, 国立バレエ・モスクワ 振付家
ドミトリー・プルサコフ Dmitry Prusakov, 国立バレエ・モスクワ ソリスト


Episode 10

ドミトリー・プルサコフ Dmitry Prusakov, 国立クレムリン・バレエ団ソリスト
アレクサンドラ・チモフェーエワ Alexandra Timofeeva, 国立クレムリン・バレエ団プリンシパル
アンドレイ・ペトロフ Andrey Petrov, 国立クレムリン・バレエ団芸術監督
ワジム・クレメンスキー Vadim Kremensky, 国立クレムリン・バレエ団監督

感想

エピソード1に登場したのはワガノワ・バレエ・アカデミー校長ニコライ・ツィスカリーゼ、2015年のワガノワ・バレエ・アカデミーの卒業してマリインスキーに入団したレナータ・シャキロワ。そしてレナータに憧れるバシコルトスタン共和国出身のワガノワ・バレエ・アカデミー新入生のソフィア・ヴァリウリーナ。モスクワのクレムリン劇場で開催された2015年のワガノワ卒業公演に向けての準備やシャキロワの入団後初の主演舞台、ソフィアが選ばれた「くるみ割り人形」マーシャの舞台までの様子が描かれました。

スポンサーマネーで動くマスメディアの批評の馬鹿らしさを笑い飛ばすツィスカリーゼが見せる、生徒たちへの厳しい指導と愛情が印象に残ります。シャキロワは卒業公演と入団後の初主演「ドン・キホーテ」の様子が取り上げられていましたが、いずれも大舞台を前にしたとは思えぬ落ち着きで準備を進めているのに感心しました。バジルはキミン・キムで、あの頃彼らは恋人同士だったのですね。公演後の舞台裏で、キミンの両親でマリインスキーの指導者でもあるヴラディミール・キムとマルガリータ・クリークの様子も見られて得した気分。

エピソード1と3に登場したワガノワ・バレエ・アカデミー1年生のソフィアは、この年実験的に選ばれた「くるみ割り人形」マーシャの一人。彼女が一緒に写真に収まったマーシャ姫はエレオノーラ・セヴェナルドでしたね。幼い娘と一緒にサンクトペテルブルクにやってきた母も故郷での順調なキャリアを捨ててきたわけで、それについても触れられていました。


エピソード2-6に渡って紹介されたのはヴァチェスラフ・ゴルデーエフが芸術監督を務めるロシア国立バレエ団。道化役が好評なアルチアンという男性ダンサーの怪我と復帰、プリンシパルのアンナとウラジーミルというカップルや同じプリンシパルのドミトリーといった団員たちの、新作準備とアンナの急病による急な演目変更、長いドイツツアー、ツアー後の舞台というハードな日常。

アルチアンは休暇中の怪我やリハビリが不十分なまま復帰を急いだ様子など、指導の目が行き届かないのかな…とちょっと心配になるくらい。教師はしっかりリハビリするようにと言い聞かせていたけれど、結局は本人の申告次第なのでしょうか。このエピソード以降はちらっとしかカメラに映らなかったけど…。

バス移動による長くハードなドイツツアーは長年このカンパニーが続けているものだそうですが、これは本当にきつそう。マールイやキエフが日本の夏と冬に日本中を回っている(た)のとどっちが大変だろうか…。日々起きる問題や、長いツアーで蓄積した疲労やストレスの中で迎えたツアー最終日の様子など、見ているだけでこちらまでしんどくなってきます。

アンナの急病で当日の演目変更になってしまった「ザ・ラスト・タンゴ」はドイツから戻ってすぐ、通常なら休暇に入るところを上演することになるのも、肉体的にも精神的にもダンサーを追い詰めます。そもそもの演目変更も代役を立てないまま準備が進んでいたからだし、芸術監督の見通しが甘いのが原因なのでは…と思ってしまいました。

取り上げられたダンサーたち、アンナとウラジーミル、そしてドミトリーには親近感が湧きました。ドミトリーは2歳になる娘に会いたくて一目散にドイツから自宅に戻ったのに、娘は長い不在の間に父親の顔を忘れていて…という幼児あるあるながらドミトリーが不憫になってしまったり。彼がレッスンの時に履いているカラフルなウールパンツは、元はマラーホフが履いていたものをブルラーカにあげて、それをまた譲りうけたものなのだとか。6年間穴をつくろいながら履いている、というのがまたいいですよね。

モスクワに戻る前日に、ホテルでツアー報酬全額が入った財布を盗まれてしまったダンサー(oh...)は翌日が移動だったために警察にも届けられなかったけれど、仲間からのカンパで無一文は避けられたということで、本気の毒だけれど、これだけツアーで一緒にいると家族のような関係になるのでしょうね。


エピソード7は2016年のバレエコンクール”アラベスク”の出演者にスポットを当てていました。夫婦、母の指導を受ける14歳の娘とパートナー、日本人の母を持つバレエ学校の生徒(千野さん親子)、審査委員長のワシーリエフに憧れてロシアでプロになった西島勇人さんとパートナーの浅井恵梨佳さんも登場。それぞれの奮闘と結果、そしてそれに対する反応なども。ほとんど遠くの方にちらっとしか映らなかったのですが、審査員には岩田守弘さんのお姿もありました。


エピソード8は”アラベスク”で入賞したN.I.サッツ子供音楽劇場のアンナ・マルコワと夫イヴァン・ティトフ。”アラベスク”のあと別のコンクールに向けて準備を進める中でアンナが足を骨折し、公演の主役は他のダンサーが踊ることになるし、口さがない同僚には嘲笑され、気持ちが焦るばかり。その様子がなんとも痛々しいのでした。結局コンクールは辞退してリハビリに専念し、翌シーズンから復帰することになるのですが(ほっとした…)、その初日にアサインされた役は舞台に出ずっぱりのハードな役。でも彼女の踊りはどこか魅力的でしたし、この演目「青い鳥」も、子供向けとはいいながら客席の大人も夢中になって楽しんでいたのが印象的です。私もこれ、劇場で見たいかも!


エピソード9は西島さんたちが所属する国立バレエ・モスクワについて。運営と振付家はクラシックからコンテンポラリーへシフトすることを決め、クラシック教師のコンスタンティンはカンパニーを去ることに。クラシックをもっと踊りたいと願うドミトリー・プルサコフも退団を決意します。ディレクターの方針でダンサーの入れ替えがあるのは仕方のないことですが…。西島さんもクラシックを踊りたいから退団の予定、とおっしゃっていましたが、カンパニーは方針を一部変更したのか、クラシック部隊とコンテンポラリー部隊両方を抱えるカンパニーになったようです。西島さんは現在もこちらで活躍されていますよね。


最終回のエピソード10は、国立バレエ・モスクワを退団してクレムリン・バレエに移籍したドミトリー・プルサコフの回でした。移籍初日に芸術監督に呼ばれてシーズンオープニング初日「ルスランとリュドミラ」で大役を任されたドミトリー。教師のワジム・クレメンスキーに指導を受けるのですが、このクレメンスキーがそれなりのお年かと思うのに一緒にステップを踏んでジャンプしての熱血指導で、目を見張りました。

「彼の問題は身長が低いこと」と芸術監督が言ったのですが、エピソード9を見ている限りでは全くそういう印象がなかったので驚きました。このカンパニーは背の高い人が多いらしく、確かにクレムリン劇場の大きな舞台で見ると彼は小さいですね。丸々太った役のためお腹に詰め物をしていて衣装の下は滝の汗。ついには付け髭も片方落ちてしまい、大急ぎでメイクさんに描いてもらったりしたものの、公演は大成功。ベテランプリンシパル、アレクサンドラの豪華な楽屋も印象に残りました。


ダラダラと書いてしまいましたが、とても面白いドキュメンタリーでした。国外の目を通してではなく、ロシアの中からこういうドキュメンタリーが生まれるのも時代ですかね。ボリショイやマリインスキー以外のロシアのバレエ団のドキュメンタリーは本当に貴重なので、食い入るように見てしまいました。