Manuel Legris Stars in Blue BALLET & MUSIC

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出演:マニュエル・ルグリ、オルガ・スミルノワ ほか
収録:2019年3月 東京芸術劇場 / 120分

録画

テレ朝チャンネル2で、貴重な公演が放映されました。テレ朝チャンネルとしてバレエ公演の独自収録は昨年の世界バレエフェス「ドン・キホーテ」と「ロイヤル・エレガンスの夕べ」に続いて3つめだと思うのですが、今回は収録も編集も洗練されてとても良かったです。ルグリのインタビューもたっぷり。今後も続けていただきたいなあ。


出演

マニュエル・ルグリ Manuel Legris, ウィーン国立バレエ団芸術監督
オルガ・スミルノワ Olga Smirnov, ボリショイ・バレエ プリンシパル
シルヴィア・アッツォーニ Silvia Azzoni, ハンブルク・バレエ団 プリンシパル
セミョーン・チュージン Semyon Chudin, ボリショイ・バレエ プリンシパル

三浦文彰 Fumiaki Miura, ヴァイオリン
田村響 Hibiki Tamura, ピアノ

滝澤志野 Shino Takizawa, ピアノ/ウィーン国立バレエ団 専属ピアニスト

収録

  • 『ソナタ』 Sonata

    振付:ウヴェ・ショルツ Uwe Scholz
    音楽:セルゲイ・ラフマニノフ Sergei Rachmaninov
    出演:シルヴィア・アッツォーニ / セミョーン・チュージン
    ヴァイオリン:三浦文彰
    ピアノ:田村響

  • ニコロ・パガニーニ「ネル・コル・ピウ変奏曲」 Niccolò Paganini: Nel cor più variations

    ヴァイオリン:三浦文彰

  • 『Moment』

    振付:ナタリア・ホレツナ Natalia Horecna
    音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ Johann Sebastian Bach / フェルッチョ・ブゾーニ Ferruccio Busoni
    出演:マニュエル・ルグリ
    ピアノ:滝澤志野

  • 『瀕死の白鳥』 The Dying Swan

    振付:ミハイル・フォーキン Mikhail Fokine
    音楽:カミーユ・サン=サーンス Camille Saint-Saëns
    出演:オルガ・スミルノワ
    ヴァイオリン:三浦文彰
    ピアノ:田村響

  • 『タイスの瞑想曲』「マ・パヴロワ」より Thais from Ma Pavlova

    振付:ローラン・プティ Roland Petit
    音楽:ジュール・マスネ Jules Massenet
    出演:オルガ・スミルノワ / セミョーン・チュージン
    ヴァイオリン:三浦文彰
    ピアノ:田村響

  • 『ノクターン・ソロ』「夜の歌」より Nocturne solo from songs of the Night

    振付:ジョン・ノイマイヤー John Neumeier
    音楽:フレデリック・ショパン「ノクターン第21番」 Frédéric Chopin
    出演:シルヴィア・アッツォーニ
    ピアノ:田村響

  • フレデリック・ショパン「ノクターン 第20番(遺作)」 Frédéric Chopin: Nocturne No.20

    ピアノ:田村響

  • フレデリック・ショパン「華麗なる大円舞曲」 Frédéric Chopin: Grande Valse Brillante

    ピアノ:田村響

  • モーリス・ラヴェル「ツィガーヌ」 Maurice Ravel: Tzigane

    ヴァイオリン:三浦文彰
    ピアノ:田村響

  • 『OCHIBA~When leaves are falling~』(新作 世界初演)

    振付:パトリック・ド・バナ Patrick de Bana
    音楽:フィリップ・グラス Philip Glass
    出演:マニュエル・ルグリ / オルガ・スミルノワ
    ピアノ:田村響

感想

極上のシルクのような公演でした。極上の音楽とダンスが対等に立ち、高め合う。こんな公演をずっと望んでいました。選ばれた作品も音楽的魅力をたたえたものばかりで至福の時。

個性豊かなメンバーで、他のどの公演とも似ていないオリジナルなもの。今までのルグリの座長公演はカンパニーの若手紹介などの要素があって、もちろんそのおかげで素敵なダンサーをいっぱい紹介してもらえて楽しかったけれど、今回はよりルグリ本人の踊る楽しみにフォーカスしたものに感じられて、彼の今後に期待が高まりました。ダンサー4人はそれぞれの個性で舞台に君臨したわけですが、作品チョイスも品が良いというか…公演全体のカラーから外れないもので、それがまたよかったです。

最初からアッツォーニとチュージンのウヴェ・ショルツですものね。出演予定だった木本全優さんが怪我で出演不可の為、シルヴィアが急遽参加となり追加されたプログラムだけど、詩情にあふれたそれはそれは美しい作品でした。アッツォーニとチュージンがこんなに合うなんて思いもしなかったけれど、呼応しあう魂に震えました。美しいつま先運びが記憶に残ります。アッツォーニは公演の体温を1,2度上げてくれたのではないかしら。ノクターンのソロも珠玉でした。彼女が踊るノイマイヤー、1つでも多く見たい人がたくさんいると思う。来てくれて本当にありがとう。

チュージンについては、実は彼ってとてもプティ好みのダンサーではありませんか?「アルルの女」フレデリ、「コッペリア」フランツ、「ノートルダム」カジモド、「こうもり」ヨハンなどなど彼に似合いそうな役が次々に浮かびます。スミルノワとの「タイス」も素敵だったけど、会場の制限がなければさらにドラマティックな作品である「囚われの女」を見てみたかった…。

そして今回改めて感じたのは、スミルノワはワガノワ出身のボリショイプリマということで正統派のロシアバレエを体現するようなイメージを背負っているけれど、実はとても個性的なバレリーナであるということ。もちろん、彼女がマイヨーをはじめとする現代の振付家と積極的に仕事をしているのはわかっているのだけど、古典作品であればあるほど そのアカデミックな技巧の上にある個性が際立つのが面白いなと。「瀕死の白鳥」はまるで初めて見るような驚きがありました。彼女とルグリのためにバナが振り付けた「OCHIBA」はスミルノワが羽織った薄衣に象徴される儚い女性にぴったり。

ルグリについては滝澤志野さんとの「Moment」再演がまた日本で見られて幸せでした。バナの新作も初演ながら完成度が高く、年齢もバレエ的なバックグラウンドも違う2人の互いへの尊敬が”沈黙の愛”として昇華されているのが美しくて。

田村さんの豊かなピアノの響き、三浦さんのキラキラと変化していくヴァイオリンの音色、その芳醇な時間がとても贅沢でした。お二方にとってダンスとの共演はどう感じられたのかわからないけれど、こういう公演がもっと増えていくことを願っています。

そして、今回は残念だったけど、いつか極上のピアノとヴァイオリンをバックにヌレエフ版白鳥1幕ヴァリエーションを踊る木本さんが見られますように。