Swan Lake / The Royal Ballet, 2018

英国ロイヤル・バレエ《白鳥の湖》リアム・スカーレット版[DVD](日本語解説付き)

改定振付・演出:リアム・スカーレット
出演:マリアネラ・ヌニェス、ワディム・ムンタギロフ 他
収録:2018年6月12日 英国ロイヤル・オペラ・ハウス(ロンドン) / 141分

画像リンク先:amazon.co.jp - 日本語解説付きDVD

大きな話題となったリアム・スカーレット演出によるロイヤル・バレエ新版「白鳥の湖」がNHKプレミアムシアターで放映されました。もーホントにプレミアムシアターのプロデューサー様々です。おかげさまでじっくりたっぷりリピートできて幸せ。

(2019.03.15追記)Opus Arteより2019年4月にDVD/Blu-rayがリリース予定とのこと


商品情報

海外|DVD(ナクソス・ジャパン:NYDX-50007 / Opus Arte:OA1286D)

FORMAT:NTSC / REGION:0

[国内仕様盤] Release: 2019/05/24

[海外盤] Release: 2019/05/23

海外|Blu-ray(ナクソス・ジャパン:NYDX-50008 / Opus Arte:OABD7256D)

[国内仕様盤] Release: 2019/05/24

[海外盤] Release: 2019/05/23

クレジット

音楽
P.I. チャイコフスキー Pyotr Il’yich Tchaikovsky
原振付
マリウス・プティパ Marius Petipa
レフ・イワノフ Lev Ivanov
改定振付
リアム・スカーレット Liam Scarlett
フレデリック・アシュトン Frederick Ashton
演出
リアム・スカーレット Liam Scarlett
美術・衣装
ジョン・マクファーレン John Macfarlane
照明
デヴィッド・フィン David Finn
指揮
コーエン・ケッセルス Koen Kessels
演奏
英国ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団 Orchestra of the Royal Opera House
撮影監督
ロス・マクギボン Ross MacGibbon

キャスト

オデット/オディール:マリアネラ・ヌニェス Marianela Nuñez
ジークフリート王子:ワディム・ムンタギロフ Vadim Muntagirov
王妃:エリザベス・マクゴリアン Elizabeth McGorian
悪魔ロットバルト:ベネット・ガートサイド Bennet Gartside
ベンノ:アレグザンダー・キャンベル Alexander Campbell
ジークフリート王子の妹たち:高田茜 Akane Takada / フランチェスカ・ヘイワード Francesca Hayward

第1幕
ワルツとポロネーズ:Tierney Heap / Meaghan Grace Hinkis / Fumi Kaneko / Mayara Magri / Matthew Ball / James Hay / Fernando Montaño / Marcelino Sambé

第2幕 / 第4幕
小さな4羽の白鳥:イザベラ・ガスパリーニ Isabella Gasparini / エリザベス・ハロッド Elizabeth Harrod / ミーガン・グレイス・ヒンキス Meaghan Grace Hinis / ロマニー・パジャック Romany Pajdak
2羽の白鳥:クレア・カルヴァート Claire Calvert / マラヤ・マグリ Mayara Magri

第3幕
スペインの王女:Itziar Mendizabal
ハンガリーの王女:Melissa Hamilton
イタリアの王女:Yuhui Choe
ポーランドの王女:Beatriz Stix-Brunell
スペインの踊り:Tierney Heap / Reece Clarke / Nicol Edmonds / Kevin Emerton / Fernando Montaño
チャルダッシュ:Romany Pajdak / Tristan Dyer
ナポリの踊り:Meaghan Grace Hinkis / Marcelino Sambé
マズルカ:Nathalie Harrison / William Bracewell

感想

スカーレット版は”王妃が”側近のロットバルトに依存しているのが物語上の大きな特徴でしょうか。夫を亡くしてから生涯喪服を脱がなかったというヴィクトリア女王を思わせるマクゴリアン王妃の喪服姿でしたが、ヴィクトリア女王とは違い、悲しみのあまりロットバルトの助言(というより命令)を退ける判断ができなくなっているのが痛々しい。ロットバルトは王子と友人のベンノに威圧的に振る舞って王妃から遠ざけているようでもあり、まだ助言者を必要とする王子には、鈍感力が微笑ましいベンノ(キャンベルくんはこういう役が本当に上手い)の他に親身になってくれる人はいないようです。

そして、4幕がスカーレット版の本領であると言っていいのかも。幕が下りた後に”王子のその後”を考えさせられる版はなかなかないと思いますし、意志を持った白鳥たちをこれほど力強く描いた版もそう多くはないでしょう。王女の側近ロットバルトや集団としての白鳥の凶暴さはマシュー・ボーン版にも見ることができますが、それともまた違う趣でした。全てが振付家権限ではないにしろ、ダンサーの個性をよく見た配役も含めて、ホワイトロッジ育ちのリアム・スカーレットならでは、と感じました。

オデットが魔法に掛けられるプロローグが追加されて、ロットバルトが彼女を選んだ理由が示されます。2つの理由のうち1つは3幕最後で王妃の王冠を手にすることに繋がっていると思うけど、王位に執着を見せるロットバルトも確かに今まであまりいなかったかな。ロットバルトの存在についてはもう少し踏み込んだ描写があってもいいように思うので(だってロイヤル・バレエだし)、再演を重ねて磨き上げられていくのを楽しみにしたいと思います。

色々新しい演出はありますが、基本はロイヤルの伝統を継承しているように見受けられました。トロワを王子の妹にしたのも前例があったように思うのだけど、「眠り」と勘違いしてるかなー私…。振付もクラシックなメソッドを尊重したもので、踊りの密度をぐっと上げることでドラマの厚みと見応えを増しているように感じます。2幕と4幕に出番のない男性陣も、1幕と3幕にこれだけジャンプとリフトがあったら疲労困憊では、という。1幕のワルツからして凄いハードですよね。

また、ジョン・マクファーレンの美術も重厚かつ豪華で品があり、本当に素晴らしいものでした。ローレンス・オリヴィエ賞ノミネートも当然ですよね。どの衣装もうっとりするほどの質感とディテールで、間近で見たくてウズウズしました。白鳥たちがクラシック・チュチュに戻ったのも嬉しいところ。


ヌニェスはオデットもオディールもとても丁寧に踊っていました。1つのプレパレーションもおろそかにせず、より高い技術を入れて磨き上げながらも、その踊りは情感を表現するために捧げられる…素晴らしかったです。王子への心情の変化が手に取るように分かりますし、能弁すぎると感じることがあるマイムも彼女はとても柔らかく見せてくれるのが好きです。ムンタギロフもまた、持ち味の素直で伸びやかな美しい踊りに磨きがかかっていて目が離せませんでした。華やかなヌニェスをたてて踊っているにもかかわらず、王子の物語になっているのが凄い。本当に貴重なダンスールノーブルですね。この人どこまで私たちを連れて行ってくれるのでしょう。

トロワにプリンシパル3人配役というのも豪華ですし、ワルツのリードも豪華でしたよねー。そして花嫁候補の姫君たちも個性的。イツァール・メンディザバルの美脚におっ!となりました。ディヴェルティスマンもスペインは特にかっこよかったですよねー。イケメン揃いの男性陣を従えたティアニー・ヒープがかっこよすぎて悶絶ものでした。ナポリはアシュトンの鬼振付を継承。サンベくんとヒンキスは踊れているけど前任者の名人芸を見ているだけにまだ少し物足りない。もちろんこれは、ラウラとリッカルドがどれだけ凄かったかという話なのですが。

4幕については、4羽の白鳥や2羽の白鳥の2幕から連なる踊りがあるのも独特でしたね。諦念が漂うコール・ド ではなく全身で嘆き本気で怒る。自分たちの呪いが一生解けなくなることを承知でロットバルトを攻撃していく…。ここにかなり揺さぶられました。


だいぶ長くなってしまいましたがあとちょっとだけ。新プロダクションでシネマ中継があったからか、カーテンコールに4幕の登場人物だけでなく王妃やベンノなどのキャストも登場するのが良かったです。リアムはシックなスーツ姿で万雷の拍手に応えていました。彼がアプローズを受けるときの、カンパニーの面々の嬉しそうなどこか得意げな様子を見るのが好き。ジョン・マクファーレンさんにも大喝采。

今回はドラマを伝えることを重要視したのか、ロイヤル・バレエの中継としては珍しく上半身アップの映像も多かった気がします。あと、2幕の白鳥たちの踊りも、グラン・アダージオが終わるまで一切拍手なしだったのですが、あれはあとで編集したのかな。


Official Trailer


この記事の更新履歴

  • 2019.03.15 - Opus Arte オフィシャルトレイラー追加。DVD/Blu-ray発売情報追加