Anatomy of a Male Ballet Dancer

監督:David Barba / James Pellerito
出演:マルセロ・ゴメス 他
制作:2017年 / 83分

画像リンク先:amazon.co.jp - 北米版DVD

マルセロ・ゴメスのドキュメンタリー映画「Anatomy of a Male Ballet Dancer」を見ました。2010年か11年頃から3年ほどかけて撮影し、公開は2017年。リージョン1です。


商品情報

海外|DVD(The Orchard:AMD-10001-0) Release: 2018/09/17

FORMAT:NTSC / REGION:1

クレジット

監督
David Barba / James Pellerito
出演
Marcelo Gomes
Veronika Part / Kevin McKenzie, ABT Artistic Director / Alexei Ratmansky, ABT Artist in Residence / Clinton Luckett, ABT Assistant Artistic Director / Dorothee Gilbert / Haroldo Rio Negro Gomes, Marcelo’s Brother / Wolf Brucher, Uncle’s Partner / Maze Maurao, Marcelo’s Mother / Helena Lobato, Marcelo’s First Teacher / Dalal Achcar, Artistic Director / Noemia "Mema", Marcelo’s Nanny / Haroldo Gomes, Marcelo’s Father / Gordon Wright, Harid Director / Olivier Pardina, Marcelo’s teacher / Luciana Boltolini / Julie Kent / Misty Copeland / Gillian Murphy / Blaine Hoven / Sergei Danilian, Dance Producer / David Hallberg / Guillaume Cote / Polina Semionova / Olga Abramova, Vaganova Deputy Principa / Julie Daugherty, ABT Physical Therapist / Joel Prouty, Marcelo’s trainer / Diana Vishneva / Olga Evreinoff, Ballet Mistress
抜粋映像
Swan Lake : with Veronica Part
Don Quixote : with Dorothee Gilbert
KO’D : with Guillaume Cote, Denis Matvienko, Leonid Sarafanov, David Hallberg (Kings of the Dance, Opus 3)
Giselle : with Polina Semionova
La Bayadere : with Diana Vishneva

感想

世界中で引っ張りだこ、人気実力とも世界トップダンサーの一人であるマルセロ・ゴメスのドキュメンタリーです。監督のデイヴィッド・バルバとジェームス・ペレリトはジョニー・ウィアーのドキュメンタリー映画を撮った方たちだそうですね。撮影に3年、膨大なフッテージの編集作業にも時間がかかったようで、公開が2017年。米国版DVDは昨年発売になりました。

子供の頃からのホームヴィデオを含めたプライベート映像、本人と関係者のインタビュー、そして公演映像も一部。日本だと映画館公開というよりはクラシカジャパンやNHK BS1などのドキュメンタリー枠向けかなあ。ゴメスのファンはもちろん、バレエドキュメンタリーが好きな層にもおすすめです。(リージョン1で日本語字幕も当然ないので、本当にどこかテレビ局で字幕つけて放映していただきたい!)

米国内での撮影は劇場の労働組合に巨額の謝礼が必要だそうで、主に海外で撮影したとのこと。「ABTのマルセロ」成分は確かに薄めですが、カンパニーといる彼の姿が今となっては切ないです。ABT成分が少なめの代わりに、海外でのゲスト公演でパートナーのバレリーナから全幅の信頼を受けて踊る様子や「Kings of the Dance, Opus 3」で振付の才能を発揮している様子などが収められていました。2012年の世界バレエ・フェスティバル全幕プロ「ラ・バヤデール」にヴィシニョーワと主演した際のバックステージの様子や公演を舞台袖から写したものも見られます。この時期、くるぶし辺りのコンディションが思わしくなかったのですね…。怪我と付き合いながら舞台出演を続けるプロフェッショナルダンサーの日常は、知ってはいてもこうして映像で見るたびに胸が潰れる思いです。

子供の頃から順を追って紹介する訳でもなく撮影の時系列でもなさそうなのですが、どの場面でもマルセロは魅力的だし、次々とダンサーたちや関係者のインタビューが登場します。女性ダンサーたちは皆彼がいかにパートナーとして理想的かを語っていますし、かつての指導者たちも彼が優秀な生徒であったかを嬉しそうに話していました。ケヴィン・マッケンジーなどのABT関係者も然り。

マルセロがとても家族思いでママやお兄さんが仲良しなのはファンのよく知るところですが、それも家族がブラジル人の男の子としてはマイナーなバレエダンサーの夢を後押ししてくれたからこそ。英語も全く話せなかった13歳の時に一人でフロリダのHarid Conservatoryへ留学(この学校へもドキュメンタリーの中で再訪、彼がいた部屋のドアにはその部屋を使った著名なダンサーのプレートがたくさん掛かっていました)。ブラジルの子供時代の舞台のホームビデオを見ると、手足が長くて柔軟性が素晴らしいし、よくぞバレエと出会ってくれました!と感謝したくなるほど。この年代の男の子にありがちな技アピールもしないし、先生もよかったのですね。

ただ、離婚したお父様との関係は複雑なようで…ママもお兄さんもNYまで何度も公演を見に来てくれているのに、父親だけは来ると言っていたのに直前にキャンセルのメールが…とマルセロがカメラの前で泣いてしまって。あれはつらかった…。その後、お父さんが仕事でフロリダに滞在中に二人が会ったところにもカメラが入って、「あと1,2年のうちにどうしてもNYに公演を見に来て欲しい、それは僕にとってすごく重要な事なんだ」と切々と訴えるマルセロにお父さんも「わかった」と返事をするのですが。映画の最後に挿入された”その後”を紹介する文面で、2017年5月のABT在籍20周年を迎えたけれど父は公演にはこなかった、とありました…。お父さんのインタビュー(お父さんは英語を話されるんですね)からは、マルセロのことを誇りに思う気持ちが溢れていたけど…ままならないものですね。

オープンリーゲイであるマルセロにはゲイでHIVで亡くなられたおじさんがいたんですよね。ゲイである事を特別だと思わせず、芸術家としても人間としても素晴らしい人であるよう導いてくれた人。この方の事もファンはよく知っていると思うのですが、このドキュメンタリーでは、兄と一緒にそのおじさんの元パートナーのところを訪問していました。そのパートナーの方と当時の思い出を語ったり、マルセロと父親との複雑な関係性を思いやったりと、今こうして見ても、当時もこのようにマルセロ少年を導いてあげたのだな、と透けて見えるよう。誰にでもこのような大人がそばに付いている訳ではない、とマルセロ自身も言っていたけど、本当にそう。

マルセロと(ベルリンに移籍した)ルシアーナ・ボルトリーニが、JKOスクールでパ・ド・ドゥの指導をする映像には、小川華歩さんの姿がありました。ローザンヌファイナルの映像もあったし、パリ・オペラ座バレエ学校時代のスクールパフォーマンス?の映像も。

去年結婚したパートナーさんは映像には登場せず、最後に「He is in love and engaged to be married.」で終わっていました。お幸せに。

そういえば……製作者がインタビューしたと報告していた人たちの中で、マリア・リチェット(元ABT)とパリ・オペラ座バレエのエトワール、ステファン・ビュリオンのインタビューは本編にはなかったです。ビュリオンはゴメスとパリオペでクラスメートだったのですね。16歳のとき、教室にフェルナンド・ブフォネスが入ってきた時は、驚きのあまり二人で顔を見合わせた、とキックスターターのページにエピソードが紹介されていました。
https://www.kickstarter.com/projects/293915341/marcelo-gomes-anatomy-of-a-male-ballet-dancer/posts/273404