Woolf Works / The Royal Ballet

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振付:ウェイン・マクレガー
出演:アレッサンドラ・フェリ、フェデリコ・ボネッリ、エドワード・ワトソン 他
収録:2017年2月4,8,14日 英国ロイヤル・オペラ・ハウス / 104分

録画

ライブインシネマで見られなかったので、もう見る機会はないかと悲しかったこの作品が、NHKプレミアム・シアターで放映されました。嬉しかったー。はー、そして生で見たいと熱望するようになりました…。


クレジット

原作
ヴァージニア・ウルフ Virginia Woolf
振付
ウェイン・マクレガー Wayne McGregor
音楽
マックス・リヒター Max Richter
美術
Ciguë / We Not I / ウェイン・マクレガー Wayne McGregor
衣装
モーリッツ・ユング Moritz Junge
照明
ルーシー・カーター Lucy Carter
映像デザイン
ラヴィ・ディープレス Ravi Deepres
サウンドデザイン
クリス・エカーズ Chris Ekers
メイクアップデザイン
カブキ Kabuki
ドラマトゥルグ
ウズマ・ハミド Uzma Hameed
指揮
コーエン・ケッセルス Koen Kessels
演奏
英国ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団 Orchestra of the Royal Opera House
ソプラノ
Anush Hovhannisyan
Voiceover from a letter by Virginia Woolf spoken by
ジリアン・アンダーソン Gillian Anderson
映像監督
ロス・マクギボン Ross MacGibbon

キャスト

「今の私 かつての私」(「ダロウェイ夫人」から) I now, I then (from Mrs Dalloway)

アレッサンドラ・フェリ Alessandra Ferri
フェデリコ・ボネッリ Federico Bonelli / ギャリー・エイヴィス Gary Avis
フランチェスカ・ヘイワード Francesca Hayward / ベアトリス・スティックス・ブルネル Beatriz Stix-Brunell
エドワード・ワトソン Edward Watson / 高田茜 Akane Takada / カルヴィン・リチャードソン Calvin Richardson

「形成」(「オーランドー」から) Becomings (from Orlando)

ギャリー・エイヴィス Gary Avis / マシュー・ボール Matthew Ball / カルヴィン・リチャードソン Calvin Richardson / フランチェスカ・ヘイワード Francesca Hayward
ポール・ケイ Paul Kay / サラ・ラム Sarah Lamb / スティーヴン・マックレー Steven McRae / ナターリア・オシポワ Natalia Osipova
ベアトリス・スティックス・ブルネル Beatriz Stix-Brunell / 高田茜 Akane Takada / エリック・アンダーウッド Eric Underwood / エドワード・ワトソン Edward Watson

「火曜日」(「波」から) Tuesday (from The Waves)

アレッサンドラ・フェリ Alessandra Ferri / フェデリコ・ボネッリ Federico Bonelli / サラ・ラム Sarah Lamb
アクリ瑠嘉 Luca Acri / カミール・ブラッカー Camille Bracher / マイカ・ブラッドバリー Mica Bradbury
デーヴィッド・ドネリー David Donnelly / ベンジャミン・エラ Benjamin Ella / ケヴィン・エマートン Kevin Emerton
イザベラ・ガスパリーニ Isabella Gasparini / ソロモン・ゴールディング Solomon Golding / ハンナ・グランネル Hannah Grennell
ティアニー・ヒープ Tierney Heap / ミーガン・グレイス・ヒンキス Meaghan Grace Hinkis / Tomas Mock / Anna Rose O’Sullivan / Marcelino Sambé / Leticia Stock
カルヴィン・リチャードソン Calvin Richardson / Gina Storm-Jensen / David Yudes
Madeline de Andrade / Mia Bailey / George Cox
Jarad Jackson / Eve Simpson / Sacha Barber

感想

この作品はマクレガーの初の全幕バレエ、でしたかね。彼がヴァージニア・ウルフを題材にした作品でアレッサンドラ・フェリを起用する、という話を聞いた時から楽しみで楽しみで、初演時の評や写真など食い入るように見たものでした。この映像は2017年の再演時に収録されたもので、今やマクレガーの振付言語がすっかり体に馴染んだロイヤルのダンサーたちが頼もしい。

第1幕はダロウェイ夫人。幕が上がると舞台の上にフェリが静かに佇んでいます。静かにゆったりと踊り始めたのは確かにマクレガーの振付なのだけど、言語を超越して1つ1つの動きにウルフの意識が宿っていました。そう、フェリが踊るという事はこういう事だった…。続く夫役のギャリーとのパ・ド・ドゥは、優しくいたわり合いつつもそこから逃れたいようでもある関係性が見えました。

夫役のギャリー、おそらく若い頃のダロウェイ夫人であるベアトリスとかつて恋人だったピータ・ウォルシュ(おそらく)役ボネッリ、サリー役のフランチェスカ・ヘイワードが、ウルフの思考の中で過去と現在を行き来します。ゆったりと踊っていた現在のウルフと夫の後に見るベアトリス、フランチェスカ、フェデの生き生きとエネルギーに溢れた踊りの眩しさよ。サリーとダロウェイ夫人の幸せの儚く美しい描写に、その詩的な表現を生み出したマクレガーその人への興味がさらに募ったのでした。

セプティマス役のエドと妻の高田さんの苦悩…高田さんのマクレガー、いいですね。セプティマスの脳裏からは戦死したエヴァンスが離れない…エヴァンス役のリチャードソンとエドのデュエットも印象に残ります。セプティマスに翻弄されるウルフ、あるいはダロウェイ夫人の魂。身を投げるセプティマス。第1幕は文学的と言いますか、ダロウェイ夫人のモチーフがしっかり入っていました。

第2幕はオーランドー。冒頭のスティーヴンとオシポワのキレキレのデュエットから目が離せません。マクレガーは意識的にクラシックのパを用いてエリザベス1世時代と現代とを繋いでいた、のでしょうか。サラ・ラムの清らかで輝くほどの美しさが印象に残ります。そのサラと、高田さん、ベアトリス、フランチェスカがユニゾンで踊るところもとても好きでした。1幕と3幕でドラマティカルバレリーナのフェリを、2幕でフィジカルとテクニックの強さでその先の可能性を提示するオシポワを起用し、その二人を繋ぐようにサラ・ラムがいて。

Kabukiの眉を潰すメイクアップは舞台映像だとさほど違和感ないなーと思っていたのですが、ポール・ケイ君はさすがにあの太い眉がないと印象が全く変わってしまうのね、という発見も。

第3幕の冒頭にウルフが夫にあてた遺書が朗読され、絶望と諦念を静かにたたえたフェリがたたずみます。彼女が死にゆく間寄り添っていたのはダロウェイ夫人のピーター、なのですね。ボネッリのパートナーリングは安定感があってとても素晴らしく、ウルフの死への旅が魅惑的なものにすら見えてきます。そしてここでもサラ・ラムは清らかで美しかった。本当に好きなダンサー。

マックス・リヒターの音楽と衣装や舞台装置といったアーティスティックチームの仕事ぶりも素晴らしく、2017年のロイヤル・バレエを代表する作品となったのでは。この作品でマクレガーがフェリにもたらしたもの、フェリがマクレガーにもたらしたものが今後どんな形でアウトプットされてくるのかも楽しみです。


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3つの世界:ウルフ・ワークス(ヴァージニア・ウルフ作品集)より

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