Afternoon of a Faun [DVD] [Import]

監督:Nancy Buirski
制作:2013年 / 91分

画像リンク先:amazon.co.jp - 北米盤DVD

日本でも公開してほしいなーというタナキル・ル・クラーク(ルクレア)の映画。貴重なアーカイブ満載でした。北米版はリージョン1ですのでご注意を。


商品情報

北米|DVD(Kino Lorber:K1314) Release: 2014/06/24

FORMAT:NTSC / REGION:1

クレジット

Directed by: Nancy Buirski

出演

Tanaquil Le Clerq / George Balanchine / Jerome Robbins

Jacques d'Amboise / Barbara Horgan / Randy Bourscheidt / Patricia McBride Lousada / Arthur Mitchell

声の出演
Michael Stuhlbarg(Jerome Robbins' voice) / Marianne Bower(Tanaquil Le Clercq's voice)

抜粋映像

Choreographed by George Balanchine
  • Agon
  • Bouree Fantasque
  • Concerto Barocco
  • Coppelia
  • Divertismento
  • Don Quixote
  • The Firebird
  • Four Temperaments
  • A Midsummer Night's Dream
  • Metamorphoses
  • The Nutcracker
  • Orpheus
  • Stravinsky Violin Concerto
  • Symphony in C
  • La Valse
  • Western Symphony
Choreographed by Jerome Robbins
  • Afternoon of a Faun
Choreographed by Lew Christensen
  • Con Amore

感想

タナキル・ル・クラークとジャック・ダンボワーズのロビンズ版「牧神の午後」(「ニューヨーク・シティ・バレエ・イン・モントリオール」Vol.4にも収録。英語聞き取りの為にボリューム上げて見たいのですが、この作品の音が酷いのでちょっとげんなりしました…)から始まるこの映画は90分ほどの長さ。リージョン制限入ってます。クローズドキャプションも用意されているようですが、今うちで使っているリーフリ機はCC対応していないので確認できず。なるべく注意深く念入りに何度も聞いたつもりですが、間違えていたらスミマセン。

タナキル・ルクラークの人生を、映像や写真、関係者のコメント、そして彼女とジェローム・ロビンズがかわした手紙の朗読で綴った映画です。バレリーナとして踊る映像や写真もあるし、プライベートのものもたくさん。関係者として登場するのはジャック・ダンボワーズとアーサー・ミッチェル、バランシンの元アシスタントでバランシン財団のバーバラ・ホーガン、そして友人のRandy Bourscheidt。タニーとバレエ学校時代からとても仲が良かったというパトリシア・マクブライドは声だけの出演でお姿が見られなかったのは残念。


私はタニーの事はそれほど詳しくなかったので初めて知る事がいろいろありました。ステージママならぬ極度のバレエマザーの母親に少女らしい楽しみを一切封じられて育った事や、バレエ学校時代にバランシンと初めて会った時のエピソード(これは有名だそうですね)、ポリオの治療についてのあれこれ、バランシンと別れた後は自立した生活を送っていたこと。車いす生活になってからのヨーロッパ旅行で友人たちと穏やかに笑う美しい姿に感銘を受けました。そして彼女の強さにも。

アーサー・ミッチェルに請われ彼が設立したダンス・シアター・オブ・ハーレムでダンサーたちを指導した事。「実際に踊って見本をみせる事はできないけど、バレエ教師でそれが出来る人もそんなにはいない。タニーは手を使って見本を見せたけれど、それが本当に素早く動くので、片腕がほぼ麻痺していた?とは思えないくらいだった」「カンパニーの2人のプリマ(1人はバージニア・ジョンソン)は実際タニーの作品だと言っていい」というミッチェルの言葉が印象に残ります。また、「アゴン」がピラティス(バランシンがタニーのリハビリに使った)からアイディアを得た作品だったというのも今回初めて知りました。

この映画の主題の1つであるジェローム・ロビンズとの交流もここまで仲が良かったとは知りませんでした。バーバラ・ホーガンがバランシンに聞いた話として、ジェリーとタニーのおしゃべりは鳥のさえずりを聞いているようなもので絶えず楽しそうに喋ったり笑ったりしているけれど、聞いていて何を話しているのかさっぱりわからない、と。ふふ、笑ってしまいました。そんな二人の様子が可愛らしいし、それを鳥のさえずりに例えるバランシンも流石。

バーバラ・ホーガンの語り口と話す内容も興味深いのですが(バランシンが香水好きなので、全ての女性ダンサーが別の香りを身に纏っていた。レッスン中にスタジオに入るとありとあらゆる香水のにおいが充満していて凄かった、とか・笑)、彼女とは違う立場でバランシンと接し続けたダンボワーズの話もまた面白い。「バランシンは若く美しいダンサーをいつも探していて、この子には新しい作品を振りつけよう、この子は妻に、この子はあの作品で使おう、この子は妻にはしない、ってずーっとその繰り返しなんだ(笑)」と。男性目線でのバランシンのそちら方面の話というのはなんだか新鮮。確かに、自分が踊るパートナーがみなバランシンに夢中だったら、男性としては面白くないですよね(笑)。


映画の中で、タニーがポリオにかかったヨーロッパツアーに出る前に出演したテレビ番組(くるみ割り人形のPddを踊って少しコメントを話す)の様子と、ツアーで踊っている映像が流れたのですが、この後に、、と思うと辛くて辛くて。このツアーは本当にハードで、練習の為のスタジオは寒くて劣悪な環境だし、踊る演目が多くて誰もが疲れて体調を崩していたのだとか…。きっとこのツアーに関わった誰もが、その後の人生で「もしあのとき。。」と思わずには居られなかったでしょう。

山岸凉子の「黒鳥 - ブラック・スワン」にも出てくるチャリティの為にバランシンが振り付けた作品(ポリオにかかる女性をタニーが、ポリオ役をバランシンが演じる)も少し出てきました。バランシンの「ラ・ヴァルス」も死にとりつかれて踊る女性役をタニーに振り付けていたのですね。。こちらの映像も象徴的に使われていてショッキングでした。


バランシンは出会った美しいダンサーたちに触発されてどんどんと新しいスタイルのバレエを生み出していったという話もありましたが、引用された映像で踊るル・クラークは唯一無二の存在だったと改めて。バランシンとロビンズという偉大な振付家二人に素晴らしいインスピレーションを与えたル・クラークという存在に私も感謝しなければ。

久しぶりにバランシン関連の本を引っ張り出してきて読みふけろうかな、という気分です。


Official Trailer